独学で行政書士 行政法のツボ14(取消訴訟Ⅲ:訴えの利益)

こんにちは。

久しぶりの更新です。

やはり新年度は何かと忙しいですね。新しい環境に慣れるまで時間がかかりますが、
こちらのブログの更新もがんばっていきたいと思います。

今日は、訴えの利益です。
長文になってしまいましたので、理解できない部分の参考程度に使ってください。
また、最後に表でまとめています。

訴えの利益

訴えの利益とは、訴訟を提起する実益のことです。訴えの利益が認められるためには、しかるべき者が原告となり(原告適格)、訴訟での請求が認容された場合に、原告の具体的な権利が回復可能であること(狭義の訴えの利益)が求められます。

上記の訴えの利益は、広義の訴えの利益とも呼ばれ、原告適格狭義の訴えの利益から成っています。

取消訴訟は、行政行為の効果を判決で取り消すことにより法的利益を回復させるものです。そのため、取り消すべき効果がなくなったときは訴訟をする必要性がなくなります。例えば、営業許可の取消訴訟が提起された場合に、その営業許可が行政庁によって取り消されたり、撤回されたりしたら、もう訴訟をすることで原告を救済する必要性がなくなりますよね。

この必要性が狭義の訴えの利益なのです。

もっとも、行政事件訴訟法9条は、

第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

となっており、かっこ内の場合のように、処分等の効果がなくなった後でも訴えの利益を認める余地が残されています。

 

具体的な事例

ここからは、具体的な判例を見ていきたいと思います。

一応理由まで見ておくと良いものには判旨を引用しています。

皇居外苑使用不許可処分の後、その使用期日が経過(最大判昭28・12・23)
結論:訴えの利益

運転免許取消処分の後、免許証の有効期間が経過(最判昭40・8・2)
→「取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至つたものとして取り扱うのが相当」
結論:訴えの利益

この判例は判旨を細かく読まないと理解しにくいかもしれませんが、簡単に言うと、免許取消処分の取消しがなされた場合には本来の免許更新期間ではなく、取消処分の取消しが確定した時に更新の手続きができると扱うわけです。そのため、本来の更新期間が経過しても、訴えの利益自体は認められるということですね。

運転免許停止処分の後、免許の効力停止期間が経過した一方で、無違反・無処分で停止処分日から1年が経過(最判昭55・11・25)
結論:訴えの利益

これは、免許停止処分の場合です。まず、免許の効力停止期間が経過したことについては訴えの利益は消滅するとすぐわかります。問題は、なぜ停止処分日から無違反・無処分で1年が経過した事情までを考慮するのかですが、関係法令によれば、免許停止処分を受けた場合、過去3年の前歴が将来の処分の加重原因になる一方で、免許停止された人が講習を受けると、過去3年の前歴が無違反・無処分で1年を経過したとき抹消されるのです。つまり、無違反・無処分で1年を経過したら、将来道交法上不利益を受けるおそれがなくなるため、訴えの利益も失われるのです。

また、もう1つの論点として、免許停止処分の記載のある免許証を所持することで、名誉、感情、信用等を損なう可能性があることについては、取消訴訟で回復すべき法律上の利益ではないとされます。

優良運転者の記載のない運転免許更新処分に対する取消訴訟(最判平21・2・27)
→「同法は、客観的に優良運転者の要件を満たす者に対しては優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うということを、単なる事実上の措置にとどめず、その者の法律上の地位として保障するとの立法政策を、交通事故の防止を図るという制度の目的を全うするため、特に採用したもの」
結論:訴えの利益

建築確認がなされた後、建築工事が完了(最判昭59・10・26)
→「建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎない」
結論:訴えの利益

土地改良事業施行認可処分の後、工事が完了し原状回復が不可能(最判平4・1・24)
→「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法三一条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではない」
結論:訴えの利益

行訴法31条とは事情判決のことですね。原状回復が不可能であることは事情判決の際に考慮されるべきものであるから、とりあえず訴訟の提起自体は認めようというわけです。

生活保護変更決定の後、保護受給者たる原告が死亡(最大判昭42・5・24)
→生活保護受給権は「被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。」
結論:訴えの利益

かの有名な朝日訴訟はどこにも出てきますね。

公務員免職処分の後、原告公務員が死亡(最判昭49・12・10)
→「本件免職処分後死亡に至るまでの間に公務員として有するはずであつた給料請求権その他の権利を主張することができなかつたという法律状態は依然として存続しており、・・・・・・原告である当該公務員が訴訟係属中に死亡したとしても、免職処分の取消しによつて回復される右給料請求権等が一身専属的な権利ではなく、相続の対象となりうる性質のものである」
結論:訴えの利益

同じく原告が死亡した場合でも、公務員の給料請求権は相続の対象となるのですね。

公務員免職処分の後、原告公務員が公職へ立候補(最大判昭40・4・28)
→「公務員免職の行政処分は、それが取り消されない限り、免職処分の効力を保有し、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであつた給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の権利、利益を回復するための必要な手段であると認められる。」
結論:訴えの利益

保安林指定解除処分の後、代替施設が設置(最判昭57・9・9)
→「代替施設の設置によつて右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなつたと認められるに至つたときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われる」
結論:訴えの利益

再入国不許可処分の後、原告たる在留外国人が日本を出国(最判平10・4・10)
→「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなる」
結論:訴えの利益

公文書非公開決定の後、その取消訴訟において公文書が書証として提出(最判平14・2・28)
「公開請求権者は、本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから、請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても、当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではない」
結論:訴えの利益

まとめると、

事案と結論だけ暗記すればほとんどの問題は解けますね。ただ、過去には1つの事案が取り上げられ、理由付けから結論までを問う問題も出題されているので、簡単な理由くらいは知っておいてもいいかなと思います。

それでは、今日はこのへんで。

次回の更新はいつになるか未定ですが、今後も有益な情報を発信していくつもりですので、よろしくお願いしますm(_ _)m



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