独学で行政書士 行政法のツボ13(取消訴訟Ⅱ:原告適格)

こんにちは。

行政書士では、判例を多く学ぶことになるのですが、実際、一生のうちで裁判の当事者になる
経験をする人って何割くらいなんでしょうね。全国で毎日何百件という件数が処理されている
と思いますが、裁判を経験したことがある人は全体の3割くらいでしょうかね。

さて、憲法のツボは以前の記事で終わりましたが、行政法と民法については今後も、
頻出論点や理解しにくいテーマを適当にピックアップしていきます。

今日は原告適格についてです。

原告適格

まず、原告とは、訴えを起こす側のことで、原告適格とは、原告となる資格のことですね。

行政事件訴訟法は、原告適格について定めており、誰でも訴訟を起こすことはできないようにしています。

(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

 

法律上の利益を有する者

原告適格は、「法律上の利益を有する者」に限られています。
この解釈につき、学説では、法律上保護された利益説保護に値する利益説が対立しています。後者の方が基準がゆるいことになります。まあ、このあたりはそこまで重要ではないのですが、肝心の判例(最判平元2・17)は「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」としています。つまり法律上保護された利益説を採用しています。

 

それから、必ずしも、処分の相手方だけが原告適格を有するわけではないのですね。
処分の相手方以外、例えば、営業許可を受けた者と競争的な立場にある者や、要許可施設の周辺住民なども原告適格を有する場合があり、それについても「法律上の利益」を有するか検討しなければならないのです(9条2項)。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

具体的な考慮事項が挙げられていますね。こういうのは2周目以降に覚えればいいです。

 

具体的な事例

原告適格があるかどうかの判断は、処分の根拠となる法令の中に、処分の相手方以外の者の利益を保護するような趣旨が含まれているかなどが考慮されます。

 

以下、重要判例を引用していきます。理由まで必要かなと思うものには判旨を載せています。

質屋の営業許可につき、既存の質屋営業者が取消訴訟を提起(最判昭34・8・18)
→「質屋営業の営業許可は、質屋営業が庶民金融の重要な部分を占めるものであり、又質物を取扱うのでその性質上犯罪捜査にも関係があって社会公共の秩序に影響があるので 、一般的に自由な営業を禁じ、許可の申請によって社会公共の秩序を及ぼす虞れのない営業者にこれを許可し、質営業を適法ならしめるもの」
結論:既存の質屋営業者には原告適格

公衆浴場の営業許可につき、既存の公衆浴場業者が取消訴訟を提起(最判昭37・1・19)
→公衆浴場法は「無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有する」
結論:既存の公衆浴場業者には原告適格

この2つの判例は、既存の業者に原告適格があるかないかで結論が分かれていますが、処分の根拠法に含まれている意図や趣旨によって結論が分かれているのです。
質屋営業法には、社会公共の秩序の安定、つまり一般国民の利益を保護する意図があるのに対し、公衆浴場法は、国民保健及び環境衛生のためという趣旨に加えて、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図までもあるとされているのです。

 

ジュースの表示に関する規約の認定につき、一般消費者が不服申立て+取消訴訟を提起(最判昭53・3・14)
→「仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかつたとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によって得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかつたにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はないといわなければならない。」
結論:一般消費者には原告適格

里道の用途廃止につき、住民が取消訴訟を提起(最判昭62・11・24)
結論:「特定個人の日常生活に個別性の強い具体的利益をもたらしていて、その廃止によって日常生活上著しい支障が生ずるという特段の事情が認められる場合」でなければ原告適格

定期航空運送事業免許につき、周辺住民が取消訴訟を提起(最判平元・2・17)
結論:航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者には原告適格

特急料金改定の認可につき、特急利用者が取消訴訟を提起(最判平元4・13)
結論:特急利用者には原告適格

史跡の指定解除につき、学術研究者が取消訴訟を提起(最判平元・6・20)
結論:学術研究者には原告適格

風俗営業(パチンコ)許可につき、近隣居住者が取消訴訟を提起(最判平10・12・17)
→根拠となる法令は「専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。」「住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。」
結論:風俗営業制限地域に居住する者には原告適格

林地開発許可につき、開発区域周辺の居住者が取消訴訟を提起(最判平13・3・13)
結論:土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者には原告適格

総合設計許可につき、周辺の居住者が取消訴訟を提起(最判平14・1・22、最判平14・3・28)
結論:建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者には原告適格
結論:建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者には原告適格

都市計画事業の認可につき、周辺住民が取消訴訟を提起(最大判平17・12・7)
結論:事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者には原告適格

 

最後に、最新の重要判例があります。
場外車券発売施設設置の許可につき、施設の周辺の医療施設開設者や居住者が取消訴訟を提起(最判平21・10・15)

→根拠となる法令が保護しているのは、「第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。」

結論:場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者には原告適格
ただし、場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者には原告適格

なかなか面白い判例です。

まとめると、

とりあえず、事案と結論だけ覚えたら正解できる問題がほとんどです。

長くなりましたが、今日はこのへんで。



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