独学で行政書士 行政法のツボ12(取消訴訟Ⅰ:処分性)

こんにちは。

いよいよ行政法のオオヤマ、行政事件訴訟法に入っていきます。
今回は処分性についてまとめます。

理解できているという方は最後の表だけ見てもらえたらと思います。

処分性

国民が行政処分の取消しを求める取消訴訟にはいくつかの要件があり、その1つに処分性という
ものがあります。

取消訴訟は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」の取消しを求める訴訟であるとされ
ている(行政事件訴訟法3条2項)ので、取消訴訟の対象は、この「行政庁の処分その他公権力の
行使に当たる行為」に限定されるわけですが、具体的にどのようなことを指しているのかが問題と
なるわけです。この点、判例(最判昭39・10・29)は、「公権力の主体たる国または公共団体が
行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが
法律上認められているもの」としています。

 

伝統的な考え方 ~処分性を認めるのは厳しめにしよう~

従来の判例は、上記のように処分性を定義していますが、大きく要件をわけると①公権力性、
②国民の権利義務に対する直接具体的な法的規律が認められるか、の2つになります。

 

例えば、行政契約は当事者の合意でなされるものなので、公権力性が認められないため、処分性を
有しません。また、行政指導は強制力がなくお願いするだけなので、こちらも要件を満たしません
し、通達は行政機関内部の文書のやり取りで、国民の権利義務に影響を与えたりしないので、要件を
満たしません。

 

古めの判例をまとめておくと、

建築許可に対する消防長の同意(最判昭34・1・29):処分性

国有財産法上の普通財産の払下げ(最判昭35・7・12):処分性

ごみ焼却場設置行為(最判昭39・10・29):処分性
→「ごみ焼却場の設置を計画し、その計画案を都議会に提出した行為は被上告人都自身の内部的手続行為に止まる」

墓地・埋葬等に関する通達(最判昭43・12・24):処分性

供託金取戻請求に対する供託官の却下(最大判昭45・7・15):処分性
→「法は、…供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を供託官に与えたものと解するのが相当」

輸入禁制品に該当する旨の通知(最判昭54・12・25):処分性
→「関税定率法による通知等は、…貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすもの」

都市計画決定としてなされる用途地域(工業地域)の指定(最判昭57・4・22):処分性
→「都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、…当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず」

反則金の納付の通告(最判昭57・7・15):処分性

 

とりあえず、事案と処分性の有無だけをセットで覚えればいけると思いますが、以前にも述べました
ように判例学習では判旨も重要で、理由付けの部分を問われるかもしれません。そのため、僕が特に
理由付けが重要だと思った事案については理由を軽く抜粋しました。

また、このような判例については予備知識がないと理解できないものが多く困りますよね。
用途地域とか、供託とか・・・。
用途地域とは、都市計画において、どの地域をどういう目的に使用するかを予め決めて、指定する
ものです。この地域は住居用とか、ここは工業用にするという感じで、指定されるものです。
供託は民法で出てきますが、簡単にいうと国の機関(法務局などに設置されている供託所)に
誰かから借りたお金を預けておく制度です。借金を返済したいのに債権者の居場所がわからない
ときなどに、供託所に預けることで借金を返済したとみなされるものです。余計な利息を払わずに済む
などのメリットがありますね。

 

新しい考え方 ~ちょっと甘く処分性を認めていこう~

まあ、従来の判例では処分性を認める場合はかなり限定されていたといえるのですが、あまりにも
限定しすぎると、国民の権利救済が十分なされないということも出てきます。そこで、近年は少しずつ
処分性を認める基準が緩和されています。例えば、取消訴訟と認めないと、その後他の手段では救済
できないような場合です。

 

具体的な判例としては、

第二種市街地再開発事業計画の決定(最判平4・11・26):処分性
→「公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすもの」

二項道路の一括指定(最判平14・1・17):処分性
→「2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるもの」

労働基準監督所長による労災就学援護費支給決定(最判平15・9・4):処分性
→「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するもの」

病院開設中止勧告(最判平17・7・15):処分性
→「医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、…行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、…実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。」

簡易水道事業給水条例の制定(最判平18・7・14):処分性
→「本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできない」

土地区画整理事業の決定(最大判平20・9・10):処分性
→「土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。」

特定の保育所を廃止する条例の制定(最判平21・11・26):処分性
→「本件改正条例は、…当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るもの」

 

こちらも多いです。二項道路の一括指定とかよくわからないものは、理解せずにそのまま判旨を覚えておけばいいと思います。一応意味をまとめると、二項道路とは、建築基準法第42条第2項の規定により、「建築基準法上の道路」とみなされる道のことで、二項道路には個別指定と一括指定があるようで、個別指定は要件がしっかり審査され個別に指定されるもの、一括指定は一定の地域全体で正確な審査は行わずとりあえずまとめて指定しよう的な感じのものです。

また、土地区画整理事業は、公共施設を整備・改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図るもので、土地の権利者から少しずつ土地を分けてもらい、その分を公共のために利用していくものです。

あとは、条例ですね。簡易水道事業給水条例のような、画一的な処理が取られるもの、一般性が高いと表現されますが、そのようなものは処分性を認めない方向です。ただ、特定の保育所の廃止のように、限られた範囲での条例制定は上記判例のように処分性ありと認定される場合があります。

以上が処分性でした。かなりボリュームがあり大変ですが、事案と結論だけ覚えればある程度は得点できます。

処分性については、多少の難問がきても、この記事の内容だけでほぼ正解できると思います。

長くなりましたが、今日はこのへんで。



↓ブログランキングに参加しています。クリックで応援よろしくお願いします。
にほんブログ村 資格ブログへ
にほんブログ村

資格受験ランキング
↓また、意見や要望、記事にして欲しいことなどがありましたら、是非コメントしてください。

意見や要望、何でもコメントしてください。名前とコメント内容のみ公開されます。